レアアースを減らしてもトルクは落とさない|省レアアースモータ設計 3つのアプローチ

着磁ヨーク
この記事の要点
●磁石の材料を替えるだけでは、トルク低下かコスト増のどちらかに行き着く

●解決策は「同じ磁石量から、より多くの磁束を引き出す」設計側のアプローチ

●磁石配置・着磁ヨーク設計・磁気回路の見直しという3つの手で、性能を維持したまま磁石使用量20〜30%の削減を狙える

 

電気自動車(EV)や産業用機器のコア部品であるモータ設計において、ネオジム磁石の高騰やサプライチェーンの不安定化は、いまや深刻な経営課題です。

「磁石が買えない・高い」という局面で、多くの開発現場がまず検討するのが磁石の材質変更(サマコバ代替やフェライト磁石への置き換え)です。しかし、単に材料を替えるだけでは、コスト削減とモータ性能の両立はできません。

本記事では、材料置換の限界を整理したうえで、「同じ磁石量から、より多くの磁束を引き出す」設計側の解決策(磁場解析・着磁最適化)と、磁石使用量を抑える3つのアプローチを解説します。

1. なぜ「材料を替えるだけ」では解決しないのか?

コストダウンや調達リスク低減のために磁石の種類を変更しようとすると、往々にして別の壁にぶつかります。

① フェライト磁石への置き換え ― トルク低下とサイズ肥大化

ネオジム磁石から安価なフェライト磁石への置き換えを検討する場合、最大磁気エネルギー積が低いため、そのままでは大幅なトルク低下を招きます。

同等のトルクを維持しようとすると磁石の体積を増やす必要があり、結果としてモータ自体が大きく・重くなってしまいます。

② 高耐熱ネオジム・サマコバ代替 ― 供給リスクは残る

耐熱性を確保するために重レアアース(ジスプロシウムやテルビウムなど)を使用したネオジム磁石や、サマコバ(サマリウムコバルト)磁石へ代替するケースもあります。

しかし、これらは材料価格そのものが高価です。特定国への依存による調達リスク(中国の輸出規制による調達難等)や価格高騰の懸念を、根本的に解消することはできません。

材料そのものの選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。

【2026年最新】中国の輸出規制と「マグネット・リスク」への対抗策

サマコバ調達難を解決!高耐熱ネオジムへの代替と今すぐできる対策

このように、単に材料スペックを変更するだけでは「性能が落ちる」「結局高コストになる」という二律背反が生じます。そこで重要になるのが、設計・解析技術によって「磁石の使用量そのものを最小化する」アプローチです。

2. 磁石使用量を抑える3つのアプローチとは?

磁石の絶対量を増やさずに目標性能(トルク・出力・効率)を達成するには、次の3つの観点から設計を見直すことが有効です。

アプローチ 要点
1、磁石配置の最適化 リラクタンストルクを最大活用する
2、着磁パターンと着磁ヨークの最適化 必要な方向へ磁束を集中させる
3、磁気回路全体(ステータ・ロータ形状)の見直し 漏れ磁束を徹底的に排除する

 

① 磁石配置の最適化(リラクタンストルクの最大化)

ロータ(回転子)内部の磁石配置を工夫することで、マグネットトルクだけに頼らない設計にシフトします。

例えば、SPM(表面磁石構造)からIPM(埋込磁石構造)へ移行し、V字配置や多層配置(マルチレイヤー構造)を採用することで、リラクタンストルク(突極性に基づく力)を極限まで引き出すことが可能になります。これにより、磁石の使用量を抑えながらも目標トルクを維持できます。

② 着磁パターンの最適化と「着磁ヨーク」の精密設計

磁石の能力を100%引き出すには、着磁プロセスが欠かせません。従来の均一な着磁ではなく、配向方向や着磁パターンを最適化(ハルバッハ配列の応用や特殊な斜め着磁など)することで、必要な方向に磁束を集中させます。

これには、最適な磁界を印加できる高精度な着磁ヨークの設計・製作がキーとなります。

③ 磁気回路全体の見直し(漏れ磁束の徹底排除)

磁石そのものだけでなく、ステータ(固定子)やロータの鉄心形状、スロット開口部など、モータ全体の磁気回路を再設計します。

無駄な漏れ磁束(磁石から出たのにトルクに寄与しない磁束)を徹底的に排除することで、少ない磁石量でも効率よく回転力を生み出す回路を構築します。

3. 磁場解析と自社着磁技術で、どこまで磁石量を減らせるか

これらのアプローチを勘や経験だけで行うのは困難です。当社は高度な磁場解析に加え、「自社での着磁ヨーク設計能力」と「高度な着磁技術」を併せ持つため、理論値にとどまらない実効性の高い磁石削減ソリューションを提供できます。

  • 自社設計による最適な「着磁ヨーク」の実現
    一般的な汎用ヨークでは再現できない特殊な磁界分布や着磁パターンを、自社での専用ヨーク設計によって精密にコントロール。狙い通りの配向・着磁を実現します。
  • 解析から実機着磁までの高度な「着磁技術」:シミュレーション上の理想的な磁束密度分布を、当社の着磁技術によって実機上で確実に再現。飽和状態や漏れ磁束の位置を可視化・最適化します。
  • 試作・検証までのスピード解決:モータ設計・解析と着磁ヨーク設計・着磁工程をワンストップで手掛けるため、試作前のパソコン上での検証から実機評価まで短期間で到達できます。

結果として、「トルクや効率を維持したまま、磁石使用量を20〜30%削減する」といった最適解へ、短期間で到達できます。

4. 自社モータで減らせるか?5つのチェック項目

現在のモータ設計に、磁石使用量を削減できる伸び代があるかどうか。次の項目をチェックしてみてください。

チェック項目
□ 10年以上前のモータ設計をベースに、マイナーチェンジを繰り返している
□ SPM(表面磁石構造)を採用しており、リラクタンストルクを活用できていない
□ 磁石の着磁において、汎用的な着磁ヨークやシンプルな単極・多極着磁しか行っていない
□ 試作評価時に「想定よりもトルクが出ない」「発熱が大きい」といった課題が出ている
□ 3Dの磁場解析によるトータルでの磁気回路検証を行ったことがない

1つでも当てはまる場合、磁場解析と着磁設計の見直しによって、磁石量の削減やコストダウンを実現できる可能性が非常に高いといえます。

5. よくあるご質問

Q1. レアアースフリーモータや省レアアースモータの検討は、試作前でないと依頼できませんか?

いいえ、どのフェーズからでもご相談いただけます。
構想設計段階はもちろん、「すでに量産・運用中の現行モータのコストダウンを図りたい」「特定の磁石が入手困難になったため緊急で置き換えたい」といった課題にも対応しています。

Q2. 磁場解析だけでなく、実際の試作や着磁ヨークの製作も委託できますか?

はい、解析から現物試作・評価まで一貫して対応しています。
シミュレーション上の提案にとどまらず、最適な着磁ヨークの設計・製作、実際の着磁評価、モータとしての特性試験までトータルでご提供します。

Q3. 現物(モータ)が1個しかない状態や、図面しかない状態でも相談できますか?

現物1個からのご相談や、図面・CADデータのみでの初期検討も歓迎しています。
「現在の構成でどこまで磁石を削れるか」の初期診断から柔軟に対応します。

6. まとめ|モータ設計委託・磁場解析・着磁のご相談はこちら

「ネオジム磁石の高騰により、製品の利益が圧迫されている」

「省レアアース・レアアースフリー化を進めたいが、開発リソースや解析ノウハウが不足している」

こうしたお悩みをお持ちの設計・開発担当者様は、ぜひ一度ご相談ください。当社では高度な磁場解析技術と着磁ヨーク設計のノウハウを駆使し、貴社製品の性能を落とさずに「磁石使用量」を最小化する最適なソリューションをご提案します。

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