着磁ヨークとは?磁石の性能を最大化する仕組みと種類を解説

着磁ヨーク

🌟 はじめに:磁石は最初から磁石ではない!?

モータやバッグの留め具などに使われている磁石。私たちは当然のように「強力な磁力を持っているもの」として認識しています。

しかし、工場で製造されたばかりの磁石(フェライトやネオジムなど)は、実はほとんど磁力を持っていません!

まるで電池を入れる前のオモチャのように、その能力は眠ったままなのです。この眠れる磁石に「命」を吹き込み、強力な磁石へと変える作業を「着磁(ちゃくじ)」と呼びます。

そして、その着磁という重要な工程で主役となるのが、本日ご紹介する「着磁ヨーク」です。

1.着磁(ちゃくじ)とは?「磁力の充電」のプロセス

着磁とは、磁石の材料に、外部から非常に強力な磁界を与えることで、磁石内部の分子の向きを揃え、永続的な磁力を帯びさせるプロセスです。

例えるなら、スマートフォンを急速充電するようなもの。短時間で大量のエネルギー(大電流)を注入します。

この「急速充電」を実現するのが、着磁電源装置という専用の機械で、着磁電源装置は、磁石の材料に瞬間的に大電流を流して強い磁界を発生させ、磁石に磁力を与えるための電力供給装置です。

2.着磁ヨークの正体:「磁気の誘導パイプ」

磁石材料を「磁石」にするためのプロセスに於いて、着磁ヨークはどのような役割を果たすのでしょうか?

a.役割:磁場を「狙った場所」に「強く」集中させる

着磁電源装置は、強力なコイル(電磁石)を使って一時的に大きな磁場を発生させます。しかし、この磁場はそのままでは空気中に拡散してしまい、磁石に十分な力が伝わりません。そこで着磁ヨークが登場します!「着磁電源がエネルギーを供給する発電機」であり、「着磁ヨークがそのエネルギーを磁化に最適な形に変換して集中させる道具」なのです。

着磁ヨークの役割 身近な例え
磁場の誘導 発電機から家まで電気を届ける「送電線」
磁場の集中 狙った場所に水を強く噴射する「ホースの先端(ノズル)」

着磁ヨークは、一般的に透磁率の高い鉄心にコイルを巻いて作られ、着磁電源装置が発生させた磁場をキャッチし、着磁対象の磁石だけに強力に集中させる「磁気の通り道」を形成します。

b.なぜ着磁ヨークが必要か?

もし着磁ヨークがなければ、磁石に与えられる磁力が弱くなり、高性能な磁石を作ることができません。着磁ヨークがあることで、着磁電源装置が発生させた大電流による磁束を集中・制御し、磁石素材に特定のパターンで強力な磁気を与えることができます。

 

3.着磁ヨークの知恵:形状が磁力を決める

着磁ヨークは、単に磁力を集めるだけでなく、磁石の「個性」も決めています。

 

 着磁ヨークの事例

1) モータ用マグネットの多極着磁

  • 目的:磁石表面に、N極とS極を交互に並べること。(多極着磁)
  • ヨークの事例: 多極着磁ヨーク
    • コイル(電磁石)から発生した磁力線を、複雑な歯車状や星形に加工されたヨークを通して、磁石の表面に多極パターンを形成します。
    • このヨークの形状(歯の数、深さ、幅)が、磁石に与えられる磁力の強さや、極の境界線の精度を決定します。
    • ブラシレスDCモータやサーボモータなど高性能モータには多極着磁の磁石が使われます。磁石の極数が増えることでモータのトルクが向上し、より滑らかな回転と高効率を実現します。
    • 磁気式エンコーダやFGマグネット(回転速度検出)などにも使われます。磁極のピッチを微細にすることで回転体の微小な動きや正確な位置を高精度な磁気センサで検出できるようになります。極数が多いほど、より高分解能が得られます。

 

2) 単極着磁

  • 目的: 単一の極性(N極またはS極)を磁石の全面に強く着磁することや、磁石の製造時に設定された磁化の容易な方向(磁化容易軸)に沿って着磁すること。
  • ヨークの事例: 空芯コイルやU字型・ブロック型着磁ヨーク
    • 鉄心を持たず、筒状に電線を巻いたコイルのみの単純構造の空芯コイルは、着磁電源装置から大電流を流すと、コイルの軸方向に一方向の強力な磁界が発生します。この磁界により、磁石の両端にN極とS極が一組だけ形成されます。
    • 着磁コイルで発生させた磁場を、分厚いU字型やI字型のヨークで挟み込むことで、磁束をその両端に集中させ、N極とS極の単一の対を形成させます。これは、磁石の厚み方向や対向する側面に磁化を与える場合によく使われます。

 

3) 磁石アッセンブリ(組み込み)後の着磁

  • 目的: 磁石を他の部品(鉄製のケースやハウジングなど)に組み込んだ後の製品へ着磁を行うこと(インプレース着磁)。
  • ヨークの事例: 専用設計のカスタムヨーク
    • 磁力による吸着や反発がないため、アッセンブリの工程が格段に容易になることで作業効率が上がり、更に作業者の指や工具の挟み込み事故の低減にも繋がります。
    • 製品の形状に合わせて、磁石だけでなく周囲の金属部品も考慮した磁気回路設計ができるため、モータの性能を最大限に引き出すことができます。
    • 複雑な形状や高密度の多極着磁が組込み後でも可能になり、設計の自由度が向上します。

 

💡 まとめ:着磁ヨークは磁石の「コーチ」

着磁ヨークは、高性能な磁石の誕生には欠かせない、「眠れる才能を呼び覚ますコーチ」のような存在です。

  • 着磁電源装置からの磁場を強力に、磁石に集中させる。
  • 狙った通りの複雑な磁気パターンを正確に刻み込む。

 

📞 磁気の課題解決は当社にご相談ください

当社では、お客様の製品に最適な着磁ヨークの設計・製造を行っております。

・モータのトルクを上げたい!
・磁気の漏れを最小限に抑えたい!
・アッセンブリ後の着磁にして作業効率を改善したい!

といった課題をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。

 

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