高効率・長寿命のブラシレスDCモータですが、最適な製品を選択しなければ、その性能を最大限に引き出すことはできません。
選定の二大要素は、モータ選定で最初に考えるべきは「トルクと回転数の関係」と「ロータ構造(インナーかアウターか)」の2点です。
今回はこの二つの要素に焦点を当て、貴社製品に最適なモータを見つけるための基礎知識を解説します。
1.基礎知識:用途を決めるトルクと回転数の関係
1-1. トルクと回転数のトレードオフ
- モータは基本的に、「トルク(回転力)と回転数(スピード)」がトレードオフの関係にあります。
- 一般的に同じ電力(出力)であれば、高トルクの設計は低回転に、高回転の設計は低トルクになりがちです。
- 用途による要求:
- 高トルク/低速: 重量物搬送、自動化機械、ロボットなど力強さや精密な位置決めが必要な用途。
- 低トルク/高速: ファン、ポンプ、スピンドルなど空気や液体を動かす用途。
1-2. T-N特性曲線(トルク-回転数曲線)でモータ性能を確認
- モータの性能を確認するためにこちらのブログでは最大性能を示すグラフを使ってT-N特性曲線の読み方を解説します。
- ポイント: モータを長持ちさせ、安定して使用するには、「連続運転領域」に収まるように選定することが重要です。
2.ブラシレスDCモータの二大構造:「インナーロータ」vs「アウターロータ」
ブラシレスDCモータは、磁石がついた回転部(ロータ)とコイルがついた固定部(ステータ)の位置関係によって、特性が大きく異なります。
2-1. インナーロータ型(高速・高応答向け)


- 構造: 磁石が付いたロータが内側、コイルが付いたステータが外側にある構造。
- 特徴とメリット:
- 低慣性: ロータ径が小さく、慣性モーメント(回りにくさ)が低いため、加速・減速の応答性が非常に速い。
- 高回転向き: 小型で高速回転に適しています。(例:ドリル、小型ファン、サーボ用途など)。
- 放熱性: 発熱源であるステータ(コイル)が外側にあるため、筐体から放熱しやすい。
- 適した用途: 電動工具、ドローン、医療用ドリル、高応答が求められるサーボアクチュエータ。
2-2. アウターロータ型(高トルク・安定駆動向け)


- 構造: コイルが付いたステータが内側、磁石が付いたロータが外側にある構造。
- 特徴とメリット:
- 高トルク: 磁石が外周に位置するため半径が大きくなり、てこの原理で大きなトルクを効率よく発生できる。
- 回転の安定性: 慣性モーメントが大きいため、一旦回転すると回転が安定しやすい。
- 薄型化: モータの軸方向を短く設計しやすい。
- 適した用途: ロボット、AGV、工作機械、巻取り装置などパワーや正確な位置決めが必要な機器。
まとめ
- ブラシレスDCモータの選定は、単なるスペック合わせではなく、用途に応じた構造の選択から始まります。
- インナーロータはスピードと応答性、アウターロータはトルクと安定性に優れています。
- 貴社の製品設計の課題(スペース、応答、力)に合わせて最適な構造を選ぶことで、ブラシレスDCモータの持つ真の高性能と高効率を引き出すことができます。
- 選定でお困りの際は、当社にご相談ください。最適なモータ選定とカスタマイズをサポートいたします